春の日に。冬物語
16
 バァン
 開かれた扉の向こうは、廊下と同じようにわずかな明かりが灯された、とにかく広い部屋だった。驚いて尻もちをついた制服姿の美少年の後ろには、大きな四角の机。そこに二人の男子生徒が対面して座っている。周りには、ゴミの山のように見える、沢山のがらくたのようなもの。四輪自動車のエンジン、タイヤ、自転車のハンドル、ペダル、縫いぐるみ、プラスチックモデル、鉄アレイ、コーヒー用のカップにご飯をよそう茶わん、カードやゲーム機、本、服、時計、大きなコンピューターなど様々なものが転がっていた。
 その中に一つ、気になる種類のものが落ちていた。それは、靴だった。もしかすると、あの中に木田先輩の捜し物があるのかもしれない。
「な、なんだおまえら!」
「わしらをシャムやと知っての狼藉かっ?」
 すぐさま席を立っておののく二人の男子生徒。その間「英、なんだシャムって?」「ボケたんや、ましな突っ込み入れんかい」などという会話もあるが、そんなどうでもいいことを聞いてくれる人間は、いるはずはなかった。
「やっぱり、あなた達ですね!」
 神妙にしなさい、と言わんばかりのの態度に、まずは手をつかずに立ち上がる翔ちゃんが反撃。
「一体何のことだよ? 僕たちが何をしたって言うんだ」
 制服をはらいながら、憎々しげに言い返す。更に向こうの変な二人も調子に乗った。
「ええ加減なことゆうなやドチビ! わいらに何の罪があるって言うんや?」
「そりゃあ、色々悪さはしてるかもしれねえけどよ」
 言っていることに矛盾が見えるが、らがそのことに気付くわけはない。ただ、風紀委員として、怪しい生徒を捕まえるという意識しかない。
「チビチビ言わないで下さい! とにかく事情を説明してもらいます。さもなければ…」
 胸ポケットにさしてあるペンを右手に、腰を落とす。既にいつもの臨戦態勢に入る。その姿を見た木田も、ケンカだケンカだ、とばかりに嬉しそうに前に出る。しかしの横に立つ美樹は、済まなさそうな顔でそばの翔ちゃんに語りかける。
「ごめんねぇ、翔ちゃん。だましちゃったみたいでぇ」
 反省の色は見えないが、一応、謝っているようだ。そのせいかどうか、美少年の表情は不機嫌そのものだ。
「フン、初めからそのつもりだったんだろ、美樹
 睨む視線で独特の構えを見せる翔ちゃんに、美樹も不機嫌そうな顔を見せる。
「あ〜、いくら翔ちゃんでもそれはない〜。ミキちゃんも怒っちゃうからねぇ〜」
 実際に怒っているそぶりは見せるのだが、言い方がいつもと変わらないのでからかっているように聞こえる。おかげで、相手の態度は悪くなる一方であった。
「フン、だ。僕たちを甘く見るなよ」
「そうや! わいらS・A・M、京本兄弟!」
「茂人!英人!翔人! 俺たち三人の力を見せてやるぜ!」
 明るい緑色の髪の翔人が一歩後ろに下がり、ツンツン頭の茂人が翔人の右、変なしゃべりの英人が翔人の左についた。
「あくまでも抵抗する気ですね!」
「仕方ないなぁ〜」
「よっしゃ、どこからでもかかってこい!」
 三者三様の態度を見せる、美樹木田は左、木田は右、そして真ん中には美樹が立つ。これはグラス・オーラに備えた布陣というべきで、唯一グラス・オーラの使用が可能な美樹を前にすることにより、グラス・オーラによる奇襲を防ぐ。
 案の定、相手の翔人が眼鏡を光らせ、何だか怪しげな腕の振りを見せた。その直後、両手を前に高々と広げ、髪の毛の色と同じ、明るい緑色の光を部屋一杯に放った。
「食らえ!」
 特に強く照らされた一行だが、その光は誰一人浴びることはなかった。
「バ〜リア〜」
 美樹の前を中心に、光が途中でさえぎられている。バリバリ、と小さな音が聞こえるさなか、木田は驚きながらこの光景を見つめていた。
「ふええ」
「なんだこりゃ?」
 グラス・オーラに疎い二人は、ただ見ているしかなかったうえ、何が起こっているのか今一わかっていなかった。そうでない美樹は、次の翔人の攻撃に備えて、グラスバリアを張りながら前をしっかり見据えている。
「さぁて、次はこっちの番〜」
 隙を見せれば即、反撃。その心積もりでいた美樹。もうそろそろ光も消えるので、グラス・オーラによる隙で、一瞬の身動きが取れない翔人を狙う。何かの視線を感じるが、気を取られるような美樹ではない。
 光の合間に、手を高く広げたままの翔人が見える。そこを付け狙う。
 だが、当の翔人は不敵な笑みを見せていた。
「かかったな!」
 確かに翔人は動けないようだ。しかし、両脇にいた二人は別。翔人の後ろにはいない、どこかと確認した所、前に出て美樹を間に挟んでいた。今にも二人で美樹をはさみ撃ちする所だ。
「覚悟せいや!」
「行くぜ、俺たちの必殺技!」
 二人同時に右腕を上げ、そして眼鏡が光って唸る。と思った瞬間、美樹に向かって殴りかかった。

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