春の日に。冬物語
14
 美樹の後ろをおう木田。まだ乾いていないジャージを着る木田、土汚れがひどいくつを履く、二人は追いかけるのが精一杯で、口を聞くこともできなかった。一方の軽がると進んで行く、浮いている美樹は、後ろの二人に何か話しかけながら進んでいた。
 そんな状態が続いてしばらくすると、岩が所々に転がっている荒れ地へたどり着いた。ここまで来ると木田も持ち前の元気を取り戻したようで、大きな岩の前に待つ美樹のもとまで駆けて行った。
「ここなのか? 美樹
 先に追いついた木田が、美樹に尋ねた。美樹は無言でうなずく。そこでようやく、が息を切らせてやってきた。
「やっと、つきましたですか?」
 疲れているのか、訳のわからない言葉づかいになっている。運動は万能の木田の足にはかなうわけもない、額に汗を浮かべての登場となった。
「う〜ん、ちょっとまってねぇ」
 が来るのを見計らって、美樹は前にした三つの大岩を眺める。同じような大きさの岩が三つ、横に並んでいる。真ん中の岩だけが少しだけ高く、美樹木田よりも一回り大きい。両端の岩は、よりも大きく美樹木田よりは低い。横幅は高さと同じで、木田美樹の三人が横一列に寝そべったら、岩三つの幅と同じ位になりそうだ。
「しっかし、でかいな、この岩」
 真ん中に位置どる美樹の右横に立つ木田が、感心したようにでかい声で呟いた。隣の、アゴに手を当てて悩む美樹をまたいで、その左隣の、膝に手を当てて呼吸を整えているが、二人に聞こえる声で呟いた。
「全くです。私の背よりも大きい岩なんて、初めてみました」
 息切れしながらも、驚きを隠せない感想を述べる。そこへ、木田先輩のいぢわるな突っ込みが入る。
よりでかい岩なら、そこら中にあるだろ」
 また、が小さいからっての、木田先輩によるいつもの皮肉。真に受けてもつまらないので、は受け流して話を変えることにした。
「それより木田先輩、捜し物って何なんですか?」
 美樹を間に置いて、質問。木田はさっきまでの会話も忘れ、軽く返答した。
「ああ、シューズだ。前にも聞いたろ、赤のラインが入った白いやつ」
 確かに以前、知らないかどうか聞かれたことはあったが、未だに見つかっていないとはさすがに思っていなかった。は、首を傾げて言葉を返す。
「あれ、まだ見つかってないんですか?」
 不思議に思うに、木田は軽く答えた。
「ああ。どうしても見つからなくて、なくしたって訳でもないと思ってさ…」
 そう言いながら、川下先輩が見つめる大岩を睨む。なるほど、だから盗まれたと考えたのだろう。木田先輩にしては、納得行くような理由だ、と思う。さっきもコレクター集団が怪しいのどうのとか、そんなこと言ってた気もするが。
「ところであのシューズって、やっぱり試合で使うから探してるんですか?」
 更に質問する木田は快く、しかし否定的に答える。
「いや、そうじゃないんだ…」
 その、木田の答えが終わらない内に、美樹のとぼけながらも真面目な声が二人の会話を遮断した。
「お願い、静かにしてぇ」
 この一言で、両翼の二人は黙る。なんか、固く口を閉ざすほどだ。そのおかげで、美樹はゆっくりとこの先に進む鍵を握ることができる。
 美樹の柔らかな指が、真ん中の大岩をめがけて延びていく。その先にあるのは、岩の中心から右手に寄った岩はだ。他の個所となんら変わりのない位置を狙う、美樹の右手。には、そして木田には何の意味がある行動か、理解しかねた。
「ここだったっけぇ?」
 緊張感のない自問自答。そんなのは誰にもわからない、しかし達は黙ったまま。美樹が岩はだに触れ、右から左に手を引く時にも、黙ったまま。
 カチャリ、とどこからともなく音が聞こえた。何かの鍵が開いたのか、木田が小躍りに喜びを表現しようとしたその時、驚くべき現象が!
「やっぱりここだったぁ」
 嬉しそうなとぼけた声が聞こえたかと思うと、美樹は岩に向かって前に進み、右足から背中まで大岩に身をうずめて消えてしまった。
「おおおおおおっ?」
 声を立てて驚く木田。仕方ないといえば仕方ない。あまりにも唐突だったから。どちらかというと、珍しがってさっさと美樹についていこうとするの方が、変わり者だ。
「待って下さい、川下先輩〜」
 も、岩の中に消えた。こうなると、木田も行くしかないと決心した。
「…う〜ん、行くか」
 グラス・オーラに慣れていないためか、木田にはちょっと信じられない出来事だった。でもまあ、そういうものだから、まあいいや、と思っての後に続いた。

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