ある日に。冬物語
21
「それより、川下先輩はいつも何しているんですか?」
 寮長さんから聞いた話では、授業が終わったらいつもここにいるというのは聞いているが、他に何もしてないのだろうか。
「ん〜、ここで雑誌読んだり、お菓子食べたり。なんで?」
 お菓子を口にしながら、きょとんとした表情で逆に聞き返す美樹。本当に何もしてなさそうだ。雑誌とかをどこから持ってきているのかはよく分からないが、聞くのが怖い気がするので放っておこう。
「何でもないです。ところで川下先輩、男物の下着とかって誰から借りてるんですか?」
 連続口撃。以前からの疑問を、今ぶつける。どうでもいい様な気もするが、ちょっと気になることもあるので。
「ん〜、カズとか、翔ちゃんとか。なんで?」
 先程と同様、逆に聞き返す美樹。解答も、何だかありていなもので、いい意味で期待外れだった。阿津田翔人ならいいというより、誰に借りたか分からない、といわれるのが怖かった。はっきりと聞いたことはないが、美樹がそういうことをしている話があったので気になっていたのだ。
「何でもないです。そう言えば、翔人さんとはお付き合いしてるんですか?」
 たて続け。前に二人がそんな態度を見せていた覚えがあるからだ。言うなれば、下衆の勘ぐりというやつだ。
「ん〜、そんなことないよぉ。それより、ちゃんはハチマキの子とはどうなのぉ?」
 美樹の反撃。ハチマキとは、もちろん、藤沢のこと。
「な、何を言うんですか川下先輩! 藤沢君はただの問題児で、そんな仲じゃ…」
 事実、そう。どこをどう見たら付き合っていることになるんだ、大げさに否定する。耳まで真っ赤にしてしまったため、余計に怪しく見える。
「ふぅん、そうなんだぁ」
「そいつは知らなんだ、
「…」
 皆、すみっこの右堂までうなずいて勘違い。でも違う、違うんだ、というのを主張したいだった。
「そんな、わたしはまだそういう男の人と付き合うとか…」
 だんだん声が小さくなり、何を言っているんだか分からなくなっていく。そのせいか、木田美樹が大笑い。
「ハッハッハ!」
ちゃん、かわいー。きゃはは」
 どうやらからかわれていたようだ。今度は、耳を真っ赤にして怒りだしたいだが、ここはこらえる一手だ。
「フンだ。どうせ、わたしは子供ですよーだ」
 そんな反応するから子供なんだ、というのは置いといて、美樹は向こうにたたずむ右堂に声をかけた。
右堂ちゃんは、そういうのないの〜? 生徒会長とか〜」
 右堂さんにそんなことを聞くとは、命知らずな。そう思うだが、右堂は別に命とか関係なく、黙ってかぶりを振るだけだった。
「…」
 そこではさも知った風に、美樹に諭す。
「生徒会長は女の人ですよ。それも知らないんですか」
 偉そう。ではあるが、美樹も、木田も別に気にしない。「そうなんだ〜」とかいうだけで、大して知りたくもなさそう。
「それより、カズに石鹸投げつけたのって、右堂ちゃんでしょ〜? 聞いたよぉ」
 先日の、風呂場ののぞきの話だ。右堂は黙って、首を縦に振る。
「…」
 なるほど、翔人さんがばれたのって、右堂さんだったんだ。それなら話が分かる。もうなずく。
「災難でした、右堂さん。全く阿津田さんには手を焼きますね」
 が何故か右堂に謝る。すると、右堂はぷいと窓の外へ目を向ける。
「…」
 またか。まあいいや、もう慣れた。ということで、話をこちらに戻す。

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