ある日に。冬物語
20
 さて、この日。女子寮、の部屋の住人、四人全員がそろった。これはまた珍しいことで、部活動の木田先輩、夜遊び…だと思える川下先輩、そして生徒会長の護衛を努める右堂さん。色々あるのでみんなそろって顔を合わせる機会は、なかなかないものだ。木田先輩の部活動が早上がりだったため、たまたま戻っていた右堂さんと鉢合わせ、中等部の川下先輩とはもちろん部屋にいたので、偶然だがこうして揃った。
 これまた、たまたま明日は休みなので、ちょっとだけ騒ぐことにした。隣の人達に迷惑かけなければ、寮長さんも乗り込んできてまで注意しないので、その辺は気をつければ何とかなりそう。右堂さん無口だし。
 そういうことで、久々に部屋をきちんと片付けて、部屋の真ん中のテーブルとお菓子とカップ四つを置いたココアパーティーが始まった。パーティーというほど仰々しくもないが、ココアなのは右堂さんのせいだ、と人のせいにしてみる。はもう慣れたし、木田先輩は何でも飲むし、川下先輩はみんなに合わせるのでこうなっただけだけど。
 とにかく、四人の話が始まった。
「本当に珍しいですね、木田先輩、右堂さん。何かあったんですか?」
 は共にちゃぶ台を囲む木田と、すみっこに一人でココアをすする右堂に尋ねた。予想通り右堂からの答えはなかったが、木田は快く大きな声で答えてくれた。
「別に何もないぞ。ただ、男子が明日試合だって言うんで早めに上がったからな。オレは女子と一緒に上がっただけだ」
 全く不本意そうな言い方だ。木田はいつも、先に終わる女子の練習の後、男子と一緒に練習をしているそうだ。は何だか不機嫌そうだが、仕方ないとも言いたそう。中等部の頃からこんな感じだったので、もう慣れた。というか、呆れ切っていた。
「そういうことですか。全く、もう」
 口を尖らせながらココアをすする。熱いのは苦手だが、ここでそんな事いうと、また子供扱いされるから黙っておく。どうでもいいが、木田先輩はあんながぶ飲みして熱くないのだろうか疑問だ。多分、神経が鈍いんだろうということにしておく。
はどうなんだ? やっぱり中等部の門限で帰ってるのか?」
 木田からの逆質問。これにはも、素直にうなずく。
「そうですよ。門限はちゃんと守ってます、木田先輩とは違いますから」
 皮肉。いくら風紀委員で頑張っているからって、そこまでやらない。第一、先輩達に無理やり帰されるのだから、門限を守るより他がないのだ。
「そうかそうか、ハッハッハ」
 皮肉はまるっきり通じてないが、話の内容は通じたようだ。取り合えず、吹奏楽部にはあまり出ていないのは内緒である。
「あれ〜、ちゃん、部活は?」
 美樹がいきなり口出し。はぎくり。
「え、ええ。それなりに出てますよ」
 冷や汗を隠しながら、苦笑い。それなりに、とは、のそれなりにだから、いいのである。
「そうかそうか、ハッハッハ」
 やっぱり木田先輩は笑っている。本当に人の話を聞いているのか、甚だ疑問だが、気にしない方がいい様な気がする。

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