ある日に。冬物語
19
「なんちゃってぇ〜、ひっかかったぁ?」
 もう涙もなく、一面に笑みを咲かせた美樹の顔。は怒るわけにも行かず、まどろっこしいまま美樹に背中を向けて、のっしのっしと音が聞こえるかのように足に力を入れてあるいた。
「さあ、早く帰りますよ! 全くもう、人の気も知らないで!」
 鼻息荒いの背中に、ちょっとだけ微笑んで、ちょっとだけ呟く美樹
「ありがと、ちゃん」
 笑っているのに、目の奥が熱く、瞳が潤む。涙の跡でわかりにくいが、頬がほんのりと赤い。
 先に帰ってしまうを、抱きつくように後ろから追って行く美樹だった。
 不思議に思うに、木田は軽く答えた。
 晴れ晴れとした次の日、たまたま美樹と朝が一緒だったの前に、人影があった。こんな朝早くから誰だろうと、校門に背を持たれる男子生徒を注意深く見てみた。
 朝の光が、白いハチマキを照らす。黒のぼさぼさな髪の毛が作る黒の影が、白のハチマキときれいなコントラストを作り出している。
藤沢君!」
 なぜ、こんな所に? 腕を組んでうつむいたまま、誰かを待っているような空気を感じることができる。ハチマキ生徒の藤沢は、の声を聞くと顔を上げ、二人を確認するとそのまま口を開ける。
「謝ろうと思ってよ…悪かったな」
 ふてぶてしいが、きちんと頭を下げて謝罪を敢行している。
「もう、気にしてないよぉ」
 後ろの美樹も、手を横に振って笑顔で応える。そしてもうなずいて
「これからはきちんと、反省していけば何でもないことです」
 妙に得意気に、無い胸を張って言う。
 すると、藤沢の態度が一変、失礼な口の聞き方になる。
「誰がお前に謝ったよ。俺は彼女に謝ったの、誰が子供みたいなお前に」
 フン。鼻息荒く、言い捨てる藤沢。こうなると、もいつもの調子でぷんぷん。
「なんですってぇ。全く、また裸に上着だけなんて変な格好して。なんでいつもそんななんですか!」
 売り言葉。それでは藤沢は買い言葉。
「何? どこが変なのか言ってみろよ。お前こそ、寝癖ぐらい直せって言うんだよ。本当ガキだな」
 だんだん雰囲気が険悪になる。一触即発、いやもう発に至っているが、美樹はなぜにか他人事。「二人とも、ほどほどにねぇ」と、笑顔で言うだけ。
 今日もまた、学園の青い空に、二人の罵り合いが響いている。
「そのハチマキと髪も何とかしなさい!」
「背、低いくせに、偉そうに言うな!」
「大して変わらないでしょ! 同じ位のくせに」
「俺の方が2センチは高いんだよ、このチビ!」
「もう怒っ…
 委員会に遅れたは、この後、こっぴどく先輩にしかられたことは、事実と相成る。

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