ある日に。冬物語
12
 男はの忠告を聞いていないのか、変わらず必死に中を見ようと首を延ばす。下から見ても何だか情けない姿、よだれがここまで垂れてきて汚い。業を煮やしたが怒り叫ぶのも、時間の問題だった。
「中等部女子校舎三階の窓に張りついてよだれを垂らした髪の青い男子生徒さん! 今すぐ降りてきて下さい!」
 わざわざしち面倒くさく、あなただ、と名指ししたように警告を放った。大声を張り上げることで、のぞかれている生徒達に気付かせるという作戦も中に含まれているようだった。だが、そこに気付いたのは、ダメ男子生徒だけだった。
「しーっ、静かに、気付かれるじゃないか」
 渋い表情で下を見、いちいちうるさい風紀委員に注意する男子生徒。甘いマスクも口もとのよだれ跡が情けなく、説得力も何もない。しかし、にはこの高さ、グラス・オーラのない身ではどうすることもできない。
 そこで同僚の風紀委員を呼びにいこうと考えた所、の目の前の窓が音を立てて唐突に開いた。
「どうしたのぉっ、ちゃん!」
 何か楽しそうだ、そんな口調で顔を飛び出させたのは、誰でもない同室仲間の美樹だった。いつものボタン一つだけかけたブラウスに短いスカート、甘えるようなタレ目に半ずらしの丸横長眼鏡。怒っとるの表情と声から、どうして楽しそうに見えるのか。驚いたは怒りを忘れて返答した。
「驚きましたよ川下先輩。今、わたしはこの上にいる困った生徒を捕まえたいだけです、何も楽しくないですよ」
 誰もそんなことは言ってないのに、美樹は思うが、言ったようなものなので気にしないことにした。それよりの現状を知りたく、さっと窓を乗り出した。
「そうなんだぁ、そしたらミキちゃんが捕まえたげる!」
 窓からふわりと降り立ち、上を見あげる美樹。その目には、怪しげな男が窓に張りついている情景が見えていた。
「え、いいんですか?」
 やや遠慮気味なに、美樹は片目をつむり、笑みをもらした。
「まっかせなさ〜い!」
 早速おでこを天に向け、目標を補足する。同時に美樹の体が空中へと旅だった。風が薄手の服をめくれ上がらせ、あちこちがの目から丸見えになる。の頬が少しだけ、赤くなった。

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