ある日に。冬物語
5  ちなみに大浴場のある女子寮別館は、この場から少し離れた、女子寮の横側に建てられている。窓の前の板など、様々なのぞき防止用の施設が建設されているが、これでも駄目ということは一体どういうことだろう。だからこそ、こうしてのぞき捕獲のために集まったのだが。
「ということで、のぞきを現行犯で捕まえたいのです」
 寮長からの依頼をそのまま男子二人に告げ、話を終わらせる
「うん、大体、聞いた通りだ」
 そのことは当たり前のように聞いてきてるであろう翔人。やはり当たり前のようにうなずく。
 一方、藤沢は何か気にいらなさそうに、返事もしない。この態度がは気にいらなかったのか、余計かもしれない一言で確認した。
「ちょっと藤沢君、聞いているの? またそんな格好して」
 これが挑発になるかとも思うが、藤沢はただ気に食わなさそうに答えるだけだ。
「わかってるよ、そんなこと。それより、実際に何をするのか決めないのか?」
 藤沢はさっさと終わらせて帰りたいと思っているようだ。やはり、風紀委員のとは長い間、一緒にいたくないのであろう。
「そうですね。それでは早速、実行に移りましょう」
 ちょっと冷たいかな、そう思えるくらいに強い語調で言い返した。すると藤沢君も、返す言葉はなかったようだ。
 さて、どのような作戦を立てれば良いのであろうか。
「待ち構える、とかぁ?」
 現行犯捕獲、ということはまず、のぞきが現れるまで待たねばならない。すると、別館近くで待ち構えるわけにもいかない。すると、誰かが大浴場を利用している所をのぞかせなくてはならない。すると、被害者が存在することになる。
「本末転倒じゃないか?」
 まず、どうするか。ここでいきなり壁にぶち当たった。翔人の鋭い突っ込みには黙ってしまう。のぞき防止のためにのぞかせるというのはどうか。
「う〜ん」
 これでいいのか。自身の考え方に反していないだろうか。悩んでいる所に、美樹が口をはさんだ。
「それじゃあ、ミキちゃんがおとりになるよぉ〜」
 あまり気にしていなさそうだ。さっきも、のぞかれてもいいようなことを言っていた。だが、おとりと言っても他に利用者がいては同じではないか。
美樹がいいって言うならいいんだろうが…どうする?」
 翔人も悩んだようにを見る。その目は、訴えかけるような潤んだ瞳だ。なぜかかわいく見えて、もしかしたらより女っぽいのではないかと考え出した。
 で、妙な案が頭に思い浮かんでしまった。
「あの、翔人さんがおとりになってみませんか?」
 ある意味、自らの女性としての自信を卑下しているかとも見えるが、そんなことを考えるではなかった。
「はぁ?」
 突然のおかしな話にすっとんきょうな声を上げる翔人だが、横にいた美樹が何だか嬉しそうに手をたたいた。
「あ、それいいかもしれないぃ〜」
 ばかばかしい作戦のような気もする。現に、藤沢は無視して耳も貸していない。ということは、翔人の意志次第で実行可能ということでもあった。さすがにも、無理強いするつもりはない。ここで断られれば、また別の策を練り出すだけ。正直、自分でもどうかとも思い、いい返事は期待していなかった。
「無理にとはいいませんけど。最近、利用者が少ないから、何とかなりそうかな〜と思っただけなので…」
 事実、軽い気持ちで言ってみただけなので、無理やりさせるのもどうかと。しかし、他に何も思いつかないので、断られたらそれはそれで困るが。

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