ある日に。冬物語

 しかし、これ以上待つのは、約束と違う。あまり遅いならば、男子寮の寮長に連絡して釈明してもらう他がない。そんなことを考えながら、敷地を隔てる壁からひょっこり小首を飛び出させ、明かりの薄い道路の様子を見てみる。
 すると、ちらりとむいた右向きの顔に、別の壁が迫り激突した。
「痛あ!」
「うわっ」
 短い髪のの顔に、男子生徒の制服の肩部分が当たり、は鼻血が出そうなほど痛い思いをさせられてしまった。
「いたた、ごめんなさい〜」
 痛がりながら鼻を抑えて首を上げるに、何だか慌てたような男子生徒。そして、後ろにもう一人の影がいる。二人連れらしい。
「いや、こっちこそ…」
 軽く謝罪の言葉を述べる相手の男子生徒は、どこかで聞いたことのあるかわいい声だった。更に姿をよく見ると、見たことのある明るい緑の長髪に、一見女の子に間違えそうなきれいな顔立ち。それでいて、生意気そうな視線。
「あなたは!」
 SAM。以前、問題を起こして風紀委員会に立入調査された、謎のコレクター集団。そこの一員、京本翔人だ。
「何だようるさいな…ん?」
 後ろの一人も聞き覚えのある、高いが重い声を、飛ばす。やぼな長髪に白ハチマキ、やはり裸に制服の上着だけ着込んでいる男子生徒、藤沢君。に気付いて不審そうな表情を見せる。
 これは怪しい。
「もしかして二人が、のぞきの犯人じゃないですかっ?」
 考えるよりまず先に、思ったことをそのまま口に出してしまう。の悪い癖だ、藤沢はつばでも吐きたそうな顔を見せるが、翔人は困ったように事情を説明した。
「違うよ。その犯人を捕まえるために、僕達を呼んだんだろう?」
 なるほど。は間違いを訂正するかのように「ごめんなさい」と謝った。しかし、その後すぐに沸いて出た疑問をぶつけた。
「それじゃあ何で遅れたんですか? 待ってたんですよ」
 待ち合わせにはうるさそうな翔人は答えに口ごもり、藤沢は既にそっぽを向いてしまう。なかなか話が進まない、その時だった。

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