ある日に。冬物語

 と、言うわけで、中等部の門限の時間。は、美樹と共に女子寮の正面玄関に立っていた。
 日が暮れて、そろそろ冷え込んできそう。影も消え行く暗い空に、帰寮してくる寮生を横目にしている、二人の女生徒。
 は真顔、美樹は嫌そうな表情。
「なぁんで、ミキちゃん達が捕まえることになったのよぉ」
 緑の髪をかき上げ、いかにもいやいや連れてこられたと言いたそうな川下先輩。しかししかし、自分だって好きでこんなことをしているわけではないのだ。
「仕方ないです。誰かがやらなくちゃならないことなんですから」
 は固い表情で、文句の多い美樹を戒めた。言い出したからの、乗りかかった船だ。もともと自ら取り締まろうかとも思っていたこともあり、覚悟の上。はしっかりと気を引き締める、が、そんなことは美樹に理解されない。
「んもう。ミキちゃんは別に、のぞかれたって気にしないのにぃ〜」
 普段着とも言える、ボタン一個しかつけてないブラウスに短いスカートで、両手を後頭部に当ててポーズをとる美樹。周りからの冷たい視線が寒い。
「そんな人ばかりじゃないんです!」
 はあ。のため息が、聞こえる。
 できればだって、木田先輩や右堂さんなど頼りになる人と共にした方がいい。川下先輩が一緒なのは、他の頼りになる人がいなかっただけだ。木田先輩は未だにバレーボールの部活動だし、右堂さんは恐らく生徒会室にいる。川下先輩が頼りにならないというわけではないが、性格上の問題で、やる気が違う。
「いくら見られたって、減るもんじゃないしぃ〜」
 今度は左手を腰に当てて変なポーズ。むしろ、のぞき歓迎のよう。これじゃあ、犯人逮捕の助力を期待できない。
「減る、減らないの話ではありません」
 きまじめな制服できまじめな表情。冷たくあしらうに、美樹は、ほおをふくらませて反撃。
「ぶーっ。大体、なんでこんな所で、ずっと立ってなくちゃならないのぉ?」
 むくれる美樹は、意味のわからないことをさせるを問いつめた。のぞきを捕まえる、その目的の為に来てもらった、というのはわかる。しかし、わずかの時間ながらも、このような無関係であろう場所にたたずむことについては理解できない。美樹の言い分はもっともである。それではも、答えなくてはならない。
「他のの手伝い人を待っているのです。もう来ているはずなのですが…」
 寮長さんの話では今回、男子寮から応援を頼んだとのこと。犯人は恐らく男子寮生だろうということで、当然、男子寮にも責任があると主張した結果だそうだ。向こうの寮長も納得済で、中等部の門限の頃に派遣するという話のはずだった。
「でも、来てないよぉ〜」
 それは正しい。そうとわかれば、美樹だってむくれる必要はない。が、理解はしても納得はしない。理由と事実が合致していない、からだ。
「おかしいですねぇ、ちょっと見てみます」
 は首を傾げたまま、男子寮がある右手を眺めに道路へ出てみた。もしかすると、ただの遅刻なのかもしれない。

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